転売とコンテンツ産業の衰退の可能性
たびたび問題となる「転売」について、今回はゲームハードやポケモンカード、ガンプラといった人気コンテンツを例に考察してみたいと思います。転売は一時的な価格高騰を生みますが、ファンやメーカーにとっては深刻な弊害をもたらす存在です。適切に対応できなければ、せっかくのコンテンツがユーザーの関心を失い、最終的には市場そのものが縮小しかねません。
ゲームハードでは、PlayStation 5(PS5)とNintendo Switch 2の対応策が対照的でした。
任天堂はオンライン販売で既存ユーザーを優先する仕組みを整え、購入履歴やプレイ時間まで考慮して抽選を行うなど、転売対策を徹底しています。Wiiの成功とWiiUの失敗を経て、学習を重ねた成果といえるでしょう。初動対応としては成功に近いものであり、今後はソフトラインナップの充実が鍵となります。
一方PS5は発売当初、大量の転売目的の購入者が店舗に並び、正規ユーザーが入手困難になる事態が続きました。筆者自身も1年以上入手できず、ようやく手に入れたのは値上げ後という苦い経験があります。その影響か、マルチプラットフォーム展開が進む中でPS5ソフトの販売は伸び悩んでいるように感じます。
ガンプラについては、バンダイが増産体制を整えるなど対策を打ち出していますが、需要のピークに商品が届かない状況は依然として存在します。アニメ放送時に欲しかったユーザーが、放送終了後には熱を失い購入意欲を失うケースが多いのです。店舗によっては「商品名を正確に言えないと購入できない」といった工夫も見られますが、根本的な解決には至っていません。
ポケモンカードも同様です。大会需要やコレクション需要が高まる中で、人気カードは即日完売し、転売価格でしか入手できない状況が続いています。その結果、手に入らなければ趣味そのものをやめてしまうユーザーが現れることもあります。これはコンテンツの寿命を縮める要因となります。
SNS上では「転売は市場原理に過ぎず、迷惑をかけていない」という意見も散見されます。しかし実際には、正規の入手が難しいとユーザーは他のハードやコンテンツに移行してしまいます。結果として開発会社やメーカーのシェア率が低下し、長期的に市場全体の縮小につながるのです。
また、メーカーが転売を前提とした過剰生産を行えば、転売が発生しなかった場合には在庫リスクを抱えることになります。資金力のないメーカーにとっては致命的であり、ユーザー数の実態を把握するうえでも転売は「ノイズ」でしかありません。
転売問題の本質は「欲しい人に正しく商品が届かない」ことにあります。ユーザーが転売から購入すれば需要が歪められ、メーカーも正しい市場規模を把握できなくなります。結局のところ、ユーザー自身が「転売屋からは買わない」という姿勢を貫くことが最大の防止策になります。
今後は、メーカーや流通業者が正規ルートを強化するとともに、個人取引用プラットフォームの健全化や制度的な対策も必要でしょう。コンテンツを持続的に発展させるためには、転売に対する社会的合意と具体的な仕組みづくりが不可欠です。ファンが安心して楽しめる環境こそが、コンテンツ産業全体を振興させる原動力になるのです。
